細胞培養培地を長持ちさせる方法 -酸素補給水を用いて

技術講座

細胞培養培地を長持ちさせる方法 -酸素補給水を用いて

松本 高明 ,萩原 敏且 ,松本 美弥子

WAARM Journal, 2019; 2: 41–43

Key words: 酸素補給水,粉末培地の溶解液,浮遊細胞培養 

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要 旨

従来の培養液は4日おきに液換えをせねばならない.しかしながら,酸素補給水を用いた培地では1週間 に1回の液換えで十分な細胞培養環境がえられる.


はじめに

細胞培養技術は医学・生物学の分野において欠か せない技術であり,医薬品の開発および再生医療の 研究など多岐にわたり使われている.培養細胞を用 いるには細胞をはじめ培地,培養方法など種々の検 討が必要である.特に,細胞の増殖には培地内の安 定した酸素補給が必要である 1).通常,培地は3あ るいは4日おきに液換えが必要である.そのため, これに従事する者は休日も返上しなければならない こととなる. 接着細胞培養では培養上清の液換えが容易であり 酸素補給は簡単である.しかし,浮遊細胞培養では 培養上清の液換えには遠心分離機を用いて浮遊細胞 を集めなければならなく,その際に浮遊細胞は損傷 を受ける.また,培養上清の液換えをしないならば, 無菌空気あるいは無菌酸素の気泡を培養液への吹込 みと撹拌を行わねばならない.そのためには酸素吸 入用の酸素補給装置 2, 3)を設置しなければならない. その上,酸素飽和濃度の調整,酸素吸入時で生じる エアレーションにより細胞損傷など 4)の問題もあ る.これらの問題を解決する一助となればと思い酸 素補給水を溶解液として培養液を作成し,細胞の増 殖と生存率からその効果を検討した.通常,接着細 胞は培養皿全面に増殖すると,細胞分裂が停止す る.しかし,浮遊細胞は細胞同士が結合していないため長く細胞分裂をする.そこで,今回の試験には 浮遊細胞を用いた.

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