発声医学療法 -発声体操の有効性-

技術講座

発声医学療法 -発声体操の有効性-

野口 千代子

WAARM Journal, 2019; 2: 44–52

Key words: 発声医学療法,発声体操,発声学,発声障害 

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要 旨

人間の最初の発声(産声)から始まる年代ごとの声の発達について紹介する.そしてウィーン国立音楽大 学発声学科で学んだ発声学全般と発声史について,さらに呼吸器科で履修した療法としての「発声体操」の 実習と効果について述べる.次に,発声体操を日本人の身体・生活環境に合わせ,「発声医学療法」として普 及させる現在の活動の様子とその成果について紹介する.最後に今後の課題と展望について述べたい.


はじめに

発声療法は発声障害の治療を目的としたものであ る.しかしながら,日本発声医学協会の発声療法は 呼吸と発声を伴う体操(発声体操)を通して,発声 障害のみならず,様々な症状の改善を目指す.発声 体操により呼吸と発声を整え,心身の状態を調整す るこの発声療法を「発声医学療法」と名付けた.発 声医学療法は,人が自分の声を聞き,その声の周波 数の力により成長期の心身のバランスを整え,酸素 不足や運動不足を補うのを助ける.さらに妊婦に とっては出産の苦痛軽減,一般社会人にとっては太 陽神経叢の活性化によりストレス軽減や自律神経の バランスを整える.また,高齢者の脳の活性化を促 し,嚥下作用を改善するなど,あらゆる年代のQOL を向上させる非薬物療法である.この発声体操によ り,認知症においては忘れ物が減り,夜中の幻覚や 不安や不眠が解消されて,睡眠が深くなり夜中の徘 徊が減り安定する.発声医学療法について述べる前 に,発声学全般を説明し,後にいくつかの事例を用 いて発声医学療法の効果について述べたい.

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