総説

サーチュイン遺伝子を活性化させる―食事制限と植物由来の医薬品

佐藤　茂　, 劉　効蘭

WAARM Journal, 2022; 4: 12–20

Key words：サーチュイン遺伝子の活性化，食事制限，植物由来の医薬品

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Abstract

Sirtuins enzymatic activity is dependent on NAD+ as a cofactor. Deregulation of sirtuins activity may lead to tissue degeneration, diabetes, cancer, neurological diseases and cardiovascular diseases. This review will examine to upregulate sirtuins, such as dietary restrictions or natural phytochemicals.

Key words: サーチュイン遺伝子の活性化，食事制限，植物由来の医薬品

はじめに

デビット・A. シンクレア教授とマシュ・D・ラブラント教授はその著書『Life Span，老いなき世界』の中で“老化は病気であり，病気を治せば人生 100 年ではなく，人生 120 年時代なる”と述べています 1）．老化が病気であるならば，どうすればこの病気を克服して長生きができるのであろうか．そのカギの一つとしてサーチュイン遺伝子があげられます 1）．
サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子または抗老化遺伝子と訳されています．サーチュイン遺伝子から作られるサーチュイン（酵素）は個体発生あるいは生命を維持するのに重要な役割を果たしています．サーチュイン（SIRT）は酵母や線虫，哺乳類など多くの動物界において知られていて，このサーチュイン遺伝子の不活性化により老化が起こります 1-4）．
サーチェイン遺伝子は寿命を延ばすだけではなく，より健康的な生活を送れるようにするものでもあり，元気遺伝子，若がえり遺伝子ともよばれるようにもなりました．
サーチュイン遺伝子は細胞質やミトコンドリア，核に存在する 5）．細胞質では SIRT1, 2，ミトコンドリア内は SIRT3, 4, 5，および核内には SIRT1, 2, 6（クロマチン），7（核小体）が局在しています（図1）．また，SIRT1 は核から細胞質へ，2 は細胞質から核へ移行します．

サーチュイン遺伝子から作られるサーチュイン酵素（SIRT）の種類とその働き 6-8）を図 2 に示しました．幹細胞の増殖・分化の促進，DNA 損傷の修復，エネルギー代謝の調節，肥満予防，抗酸化作用など生命を維持する多くの作用と関係しています．そこで，サーチュイン遺伝子を活性化させる食事方法や植物由来の化学物質を紹介いたします．