慢性歯周病に対する抗菌光線力学療法(aPDT)の有効性 -老化との関連性
総説
慢性歯周病に対する抗菌光線力学療法(aPDT)の有効性 -老化との関連性
候 猛,劉 效蘭,趙 亜南
WAARM Journal, 2019; 2: 34–40
Key words: 抗菌光線力学療法,(aPDT),慢性歯周病,periowave,歯髄幹細胞
Abstract
Antimicrobial photodynamic therapy (aPDT) is based on the combination of photosensitizer (PS) and wavelength of visible light. The reactive oxidation species that are produced by aPDT can cause damage to bacteria. Recent preclinical and clinical data have suggested a potential benefit of aPDT in the treatment of periodontitis. Periodontitis is multifactorial disease that is associated with loss of supporting tissues. aPDT is effective in decreasing bacteria and microbial biofilms. Many data suggest that aPDT is not effective to probing depth reduction and clinical attachment level gain. But it results in reduction in bleeding scores. On the other hand, dental pulp stem cells (DPSCs) are formed in bone root and periodontal membrane. Thus, we suggest a treatment using aPDT and DPSCs for periodontitis.
はじめに
光線力学療法photodynamic therapy: PDT,(中国 では光動力療法と呼ぶ)は主に腫瘍の治療に用いら れている.腫瘍組織(腫瘍細胞および新生血管)へ の集積性がある光感受性物質を患者に投与した後, 腫瘍部に弱いレーザー光を照射することにより光感 受性物質が光化学反応を起こす.その時に産生され る活性酸素(reactive oxygen species: ROS)により腫 瘍細胞をアポトーシスapoptosisや壊死necrosisさ せるがん治療法であり 1),上皮内腫瘍intraepithelial neoplasias, グリオブラストーマglioblastomaなど 2, 3) 多くの臨床例があり,25年以上の歴史を持つ療法である.この光線力学的療法の方法論を用いて,口腔 内の歯周菌の殺菌を目的としたのが抗菌光線力学療 法antimicrobial photodynamic therapy(aPDT)である. 歯周菌の感染・増殖およびプラークplaque(歯垢) 形成により慢性化した歯周病periodontitis,pyorrhea alveolarisとなる.慢性歯周病あるいは歯槽膿漏と 呼ばれるものは増殖した歯周菌の内毒素により歯 肉,セメント質,歯根膜および歯槽骨の歯周組織 periodontal tissueが破壊されて歯が動くようになり, 最終的には歯が抜け落ちる 4). 外科的以外の歯周病の治療には,歯磨きbrushing, スケーリング・ルートプレーニングscaling and root planning; SRP5)などがある.しかしながら,歯周ポケット内に入り込んだ歯周菌を完全に除去するのは 難しい.そこで,抗生物質による歯周菌の殺菌・除 去する化学療法が用いられている.しかしながら, 抗生物質による長期間の治療は副作用のみならず耐 性菌が出現する 6).そこで,副作用のないaPDTに よる歯周菌の殺菌が注目されている.この治療法は 簡便であり,訪問医療でも使える小型あるいはペン 型のaPDTの使用方法,臨症例およびaPDTと間葉 系幹細胞療法併用の可能性について述べたい.